寝ている間に、成長ホルモンが分泌され、肌や筋肉など、からだのさまざまな部位の新陳代謝や修復を行っていることは、よく知られています。睡眠は、からだにとって、疲れをとるための休息だけでなく、生きていくうえで、必要不可欠な重要な時間なのです。
さらに睡眠中に、新たなひらめきや、アイデアを自分の力で生み出せる可能性があり、その可能性はさらに発展するだろうという説が、「ネイチャーダイジェスト」2020年2月号に紹介されています。
10年ほど前に、アメリカで、ある音を特定の記憶と関連づけておき、睡眠中にその音を聞くと、その記憶が再活性化する、という標的記憶再活性化(TMR)という手法が考案されました。さらにその手法が問題解決に有用となりうるかと調べた、興味深い研究結果が、2019年に発表されました。
約60人の被験者がパズルに挑戦し、その際に問題ごとに特徴的なメロディーを繰り返し流します。解けない問題が6問になるまで、これを続けます。被験者は、同じ日の睡眠時に徐波睡眠(ノンレム睡眠の4つのステージのうち後半の2つで、記憶の定着に重要な役割を果たすとされます。)を検知するとメロディーが流れる装置をつけ、眠りました。翌日、被験者は、未解決の6つの問題に再度、取り組みます。翌晩は別のセットの問題を使い、この実験を繰り返しました。被験者は、音の刺激を伴った問題の32%を解くことができましたが、音刺激のない問題では、21%にとどまり、大きな差が出ました。
この結果は、TMRの手法を発展させていけば、人間は、起きている間に解決できない問題を、睡眠中に取り組むことができる方法を見出せるようになるかもしれない、という可能性を示唆しています。
“ひらめき”や“アイデア”は、書類やPCに向き合っているときにではなく、まったく関係ないことをしているときに、ふと思いつくことが多いといわれています。皆さんもそんな経験が、ありませんか。
そのふとした“ひらめき”を睡眠中に意図的に、得られるようになったら、世の中に新しいアイデアが、きっと今よりも多く、次々に生まれてくるでしょう。
解決したい問題や、ひらめきがほしいことについて、寝る前に少し集中して考えておくと、睡眠中に、すばらしいアイデアが得られるかもしれません。
参考:ネイチャーダイジェスト2020年2月号