免疫力についての意識が高まるなか、“平熱”が19世紀より現代の方が、低くなっているという興味深い研究結果がネイチャー誌(ネイチャー誌ダイジェスト2020年4月号)で取り上げられています。この研究は、スタンフォード大学(米国カリフォルニア州)の感染症疫学者パーソネル氏のチームによるアメリカで行った調査研究によるものです。
この研究によると、1851年にドイツの医師ブンダーリヒ氏により、平熱は37℃に決定されました。しかし、実際のところ2017年に約35,000人を対象とした調査を行った結果、平均体温は、36.6℃でした。私たちも平熱といえば、36℃ほどを思い浮かべる方が、多いのではないでしょうか。
当初、この差は測定誤差によるものと推測されていましたが、その後のさまざまな年代の膨大な数の体温調査データを詳細に分析すると、10年に0.03℃ずつの割合で体温は低下してきていることがわかりました。このデータ分析によると、例えば、1990年代後半に生まれた女性の体温は、19世紀初めの10年間に生まれた女性の体温より、0.32℃低く、男性は0.59℃低いことがわかっています。
体温低下の理由について、19世紀では、結核などの体温上昇を招く慢性感染症の罹患率が高かったためではないかとされています。時代とともに、平熱も変わってきている、といえるかもしれません。
現代日本では、平熱36.5℃くらいを維持すると、免疫力を最大限に発揮できるとされています。体温は、からだの生きるエネルギーを表すともいわれ、体温の低下は、免疫力の低下と直結します。栄養不足、水分不足、運動不足、睡眠不足、過度なストレスが体温低下に影響を与えるとともに、50歳頃から加齢も体温低下の要因となります。
体温対策として、からだを温める生姜(加熱)や、やまいも、葱などの食材を積極的に摂る、十分に水分をとり、適度な運動を行う、入浴は、シャワーだけでなく浴槽にゆっくりとつかる、十分な睡眠をとる、などが挙げられます。加えてストレスを忘れられる時間を意識してとり、免疫力をよい状態に保つよう心掛けていきましょう。
参考:「ネイチャーダイジェスト」2020年4月号、「自力で免疫力を上げる40の法則」株式会社宝島、「すぐわかる免疫力の高め方」株式会社主婦の友社